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「え~っと……その……あの……」
挽回の言葉が浮かばない。
どうしよう。ちょっとした悪ふざけが、こんな気まずい大惨事を呼び込んでしまうとは思ってもみなかった。
空前絶後のこの事態に緊張と後悔と混乱で、俺はビビってキョドってテンパった。
すると――
『クスクスクス♪』
電波の向こうから笑い声が聴こえてきた。
どうやら俺の挙動不審な対話が面白かったらしい。
顔も名前の知らない女の子のお陰で、舞い上がっていた俺の気持ちを落ち着かせることに成功した。
ケータイの受話器を通じて柔らかな雰囲気を感じたところで、電話をかけてきた女の子が口を開いた。
『もしも~し♪
僕、ぴぴる♪
今、旗舞駅にいま~す♪』
ガチャ!
ツー。ツー。ツー。
「……だから何だよ」
さよなら、和やか空気。
ただいま、おかしな空気。
「イタ電?」
『ぴぴる』とか名乗ってはいたけど、どう考えてもイタズラ用の偽名だろう。
旗舞駅とは、俺の通う高校の最寄の駅であり、俺の家から一番近い駅でもある。どうやらあの女の子はここら辺の高校に通っているのか、ここら辺に住んでおり、何らかの形で俺の携帯番号を知って俺にかけてきたのだろう。問題は――どういう経緯で俺の個人情報が流出したかだ。
見ず知らずの人に携帯番号を知られる――何だか気持ち悪くなってきた。
ジャララララララーン♪
俺は鼻歌で着信の復唱をしながら通話ボタンを押した。
こんな状況でもテンションを上げてくれる、エリック・プラクトンはマジで神だね。
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