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机の上に鞄を置いて椅子に座り、ふぅ、と一息つく。
何気なく周りの席に視線を這わせていると、隣に座っていた人物と目が合った。
綺麗な赤い髪。眉間にシワの寄った鋭い目つき。間違いない、高嶋くんだ。
「あ。高嶋くん。おはよう」
わたしが笑顔で声を掛けると、高嶋くんはビクッと体を一瞬震わせて椅子と共に勢いよく後退った。
騒がしかったクラスの空気が静まり返る。
「…今の音、何?」
「さあ。高嶋くんが何かしたんじゃない?」
「うわ。新学期早々暴れるのとかマジ勘弁してほしいわ」
「しっ。聞こえるって」
数秒の沈黙の後、前方で固まっていた女子の集団が小声で会話を始めた。あまり聞き心地のよくない内容だ。
高嶋くんの様子を伺っているのか、ちらちらとこちらを見ている。
「さっきはぶつかっちゃってごめんね。大丈夫だった?」
わたしは聞こえないフリをして高嶋くんに話を振った。
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