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「………別に…」
高嶋くんは体勢を立て直し、若干クセの付いた赤髪を掻き上げながら短く答える。その視線はあちこちをさ迷っていて、意図的にわたしを避けているような気がした。
この微妙な反応は何だろう。緊張してるのかな。
「よかった!隣同士、仲良くしようね」
満面の笑みで高嶋くんに右手を差し出してみる。握手すれば緊張も解れると思ったからだ。
わたしの行動に、何故だか周囲がざわついている。
誰かの生唾を飲み込む音が響いた。
「………」
高嶋くんはわたしの右手を凝視したまま体を硬直させている。1分が過ぎても微動だにしない。
…あれ。この間(ま)は一体何?
微妙な空気のまま数分が経過した後、先生が教室に入って来たことでわたしと高嶋くんの交流は強制終了させられた。
結局、高嶋くんの手がわたしの右手に伸びることはなかった。握手失敗。
「バカ」
ヤトの呟きが遠くで聞こえた。
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