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「あー、ぶつかっちゃってごめんね。高嶋くん」
わたしが謝ると、高嶋くんは驚いたように少しだけ目を見開いた。茶色っぽい子犬のような瞳でわたしを見る。
けれどもそれは瞬間的なことで、高嶋くんはすぐにそっぽを向いてしまった。
「………怪我は?」
ぼそり。高嶋くんが呟くように問う。
うまく聞き取れなかったわたしは、え?と訊き返した。
「…だから、怪我とかしてないかって訊いてんだよ」
おお。今度は少し大きめの声で言った高嶋くんに、わたしは笑顔で親指を立てた。
「大丈夫!問題なし!」
「………あ、そ」
高嶋くんはぶっきらぼうに反応すると、踵を踏んだ上靴でスタスタと歩き去って行った。
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