胸躍る新学期

6/8
前へ
/20ページ
次へ
「あー、ぶつかっちゃってごめんね。高嶋くん」 わたしが謝ると、高嶋くんは驚いたように少しだけ目を見開いた。茶色っぽい子犬のような瞳でわたしを見る。 けれどもそれは瞬間的なことで、高嶋くんはすぐにそっぽを向いてしまった。 「………怪我は?」 ぼそり。高嶋くんが呟くように問う。 うまく聞き取れなかったわたしは、え?と訊き返した。 「…だから、怪我とかしてないかって訊いてんだよ」 おお。今度は少し大きめの声で言った高嶋くんに、わたしは笑顔で親指を立てた。 「大丈夫!問題なし!」 「………あ、そ」 高嶋くんはぶっきらぼうに反応すると、踵を踏んだ上靴でスタスタと歩き去って行った。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46人が本棚に入れています
本棚に追加