正体

2/7
前へ
/7ページ
次へ
 館から出られるかわからない。迫り来る恐怖と手足がしびれるほどの緊張。  肩に乗せられた手に心臓は押し潰されそう。だって、あの顔がまた……目の浮き出たあいつがいるかもしれない、そう思うだけでギブアップしたいとこなのに。    だけどしないのは、とりあえずやってみようとした俺の意地。  おそるおそる振り向いて見えたのは、さっきの不気味な顔。 「ひっ!?」  風もないのにふわり舞う桜の花びら。 「タスケテ……」 「たすけて?」  冷たいけどなんだか寂しい声と、花びらの文字を読んだ俺の声が重なる。 「どういうことだ?」  桜の花びらの〈タスケテ〉は目の前の奴の言葉?
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加