2人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
屋上に彼女の姿はなかった。
男は呆然とした。
向かい側にはさっきまで自分が立っていたビルが見える。
何故だ。
なんなんだ、これは。
男は空を見上げた。
星はない。
しかし、その空の下では相変わらずネオンが光輝いていた。
呆然としながらも、ゆっくりと歩み始めた。
ビルの淵に立つと、彼女の思いが足元から伝わってくるようだった。
男は下界を見下ろしながら、涙を流した。
涙は目から滴り遥か下へと落ちていった。
あまりに長い夜。
酷い夜。
男は疲れきっていた。
しかし、その脳裏には不安や自殺といった言葉は跡形もなくなっていた。
最初のコメントを投稿しよう!