女神とかき氷

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朱雀号(京都発→横浜行き)が到着し、人々の出入りが慌ただしさをむかえた。 人の多さとそれらの増大された熱量に、さすがの堂化もうんざりしたのだろう。ホームの奥まった位置にあるベンチに腰をかけた。 そこで彼は、半ばじーっと座り、乗客たちの流れを時折見ている風であったのだが、その人々の中にある人物を見つけたらしい。 すっと立ち上がると、手を大げさなほど大きく振った。そしてそこに駆けていった。 そんな俊敏だか、大げさだかわからないこの動作を同じベンチに腰かけていた老夫婦ふたりは、ポカーンとした顔で見つめていた。 きっと、ポカーンとした人たちは彼らだけではないだろう。……
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