プロローグ

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俺の名前は予桜夙祐二(ヨロシクユウジ)。山田さんの部署にいる新人刑事だ。 生まれてから俺が見ている世界と周りの人達の世界が違うと気付くのにずいぶんと時間がかかった。 ………正確には聴こえている世界が、だけど。 どういう意味かと言うと、分かりやすく言えば俺の耳は生まれつき良かった。 例えば動物の言葉がわかるとかじゃなくて、ただ純粋に良く聴こえるだけだった。 『えっ?それってラッキーじゃん。』と思う人もいるだろうけど俺にとっては苦痛の塊でしかなかった。 何故か?っていう答えは簡単でただ単に周りがうるさすぎたからだ。 俺の耳は人の声だけじゃなく、周りの騒音や一km先のコインの落ちる音まで聴こえたのだ。 そして最も俺を苦しめたのはほかの人の心臓の音まで聴こえたことだ。 心音が聴こえると例えば人の嘘を見破ることができたりもする。 人は嘘をつくときやハッタリをかますときはだいたいの人達は緊張したり動揺したりして何らかの形で心音に変化が生じる。 俺の耳はそういった僅かな変化を捉えて嘘を暴く。…………俺の意思関係なく。 この耳のおかげで俺は一時期かなり苦しんだ。 でも俺の周囲にいる人達のおかげで今は自分の信じる道を歩めている。 ―――いろんなことがあったけど、俺も今年で十六歳―――高校一年生になった俺がどんな生活を過ごしているかと言うと――――
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