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「でもまぁ……薫がここに来るのは……私、分かってたよ」
彼女曰わく、彼女は"預言者〟だそうだ。決して、予言者では無いらしい。俺には、それらの違いが良く分からない。
因みに、望は一年生にも関わらず、部活の部長を務めている。
察しの通り、"預言部〟だ。更に、部員数は三十人越えという、驚異の数字を叩き出している。予言の的中率は、何と百パーセントらしい。
「おーい、あんたら。もう直ぐ閉店時間じゃよ。早く帰んなさいな」
もう、時刻は六時前後になっていた。俺は帰ろうとしたが、望は帰る気配を見せない。やはり、『ゴムチュウ』が気になるらしい。
「……、」
「なぁ、望。もう帰ろうぜ?」
「……、」
「……(汗)」
「……(欲)」
「……(焦)」
「……(泣)」
「あぁ!! 焦れったいな!! オバサン、十円でこれ下さい」
乱雑に俺は財布を取り出し、数少ないお金を出した。
途中から商品ではなく、望は、俺を円らな瞳で見つめるという高等テクニックを繰り出して来た。
あの綺麗な瞳かつ、整った顔、そして栗色の艶やかなロングヘヤー。これら高スペックの持ち主の上目遣いは、威力が凄すぎる。
簡単に言うと、俺は望に負けた。
「こうすれば、薫が買ってくれると……神からのお告げが……」
望は早速、俺が買った『ゴムチュウ』を噛みながら、無表情でオカルトじみた言葉を発した。
「はぁー、全くお前のせいで余計な出費だよ!!」
「そんなに怒らないても……。心配しなくても、それ相応の見返りはしっかりと……返すから」
チューイングガムを噛んでいる彼女の言葉からは、何故だか知らないが妙に信憑性が感じられた。やっぱり、望は不思議な奴だ、いや、おかしな奴の方がしっくりくる。
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