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「これからの未来は……薫次第よ……」
彼女は突然、右の人差し指で、俺を勢い良く指差してきた。
俺は内心ホッとした。預言内容がタクと同じような感じだったからだ。あれだけ心配した俺の感情を返して欲しい。
「俺次第って、どんな未来もその人次第で決まるだろ」
「ううん、それは違う……。人はそれぞれ『運命』という名のレールに沿って……生きているの」
「運命って、そんな大袈裟な――――」
「それを、薫は覆す事が出来るの……。ね、素敵な未来でしょ……?」
彼女はクスリと笑みを零し、そのまま、栗色の髪を揺らしながら、俺を置いて歩いて行ってしまった。
俺は溜め息混じりの息を吐き、手汗を制服のズボンで拭いた後、彼女を追う事にした。
俺は結局、彼女が残したメッセージの"本当"の意味が分かっていなかった。
運命、これにどれだけの意味があるのかを。彼女の真意を適当に受け取った俺は望の横に立って歩き出した。
辺りはもう殆どが闇に包まれ、微かに見える光が前方に点々としているだけ。住宅街はもう近いようだ。
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