借金まみれの少年のお話

15/25
前へ
/112ページ
次へ
「これからの未来は……薫次第よ……」  彼女は突然、右の人差し指で、俺を勢い良く指差してきた。  俺は内心ホッとした。預言内容がタクと同じような感じだったからだ。あれだけ心配した俺の感情を返して欲しい。 「俺次第って、どんな未来もその人次第で決まるだろ」 「ううん、それは違う……。人はそれぞれ『運命』という名のレールに沿って……生きているの」 「運命って、そんな大袈裟な――――」 「それを、薫は覆す事が出来るの……。ね、素敵な未来でしょ……?」  彼女はクスリと笑みを零し、そのまま、栗色の髪を揺らしながら、俺を置いて歩いて行ってしまった。  俺は溜め息混じりの息を吐き、手汗を制服のズボンで拭いた後、彼女を追う事にした。  俺は結局、彼女が残したメッセージの"本当"の意味が分かっていなかった。  運命、これにどれだけの意味があるのかを。彼女の真意を適当に受け取った俺は望の横に立って歩き出した。  辺りはもう殆どが闇に包まれ、微かに見える光が前方に点々としているだけ。住宅街はもう近いようだ。  
/112ページ

最初のコメントを投稿しよう!

176人が本棚に入れています
本棚に追加