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「はあ、取り敢えず水云々はともかく、これからどうすんだよ?」
詳しい内容は一週間前の夜に、直接、そして唐突に伝えられた。しかし、それを今夜、本当に行うのか? という真意を込めて俺は尋ねた。
「アハーハー!! 何を言い出すんだい、薫。それは先週、は、な、し、た、ろ?」
な、殴りてぇ……。こんな感情に俺の心は満たされた。しかし、分かってもいた。父さんはこうでもしないと、精神が保っていられないという事を。俺は沸き上がった感情を何とか抑え、普通を演じきった。
「……本当に、やるんだよな?」
「……ッ!! ゴホン、勿論、今日やるって一週間前から決めてたんだ。今は、それしか方法が無い……」
俺の真剣さが、やっと理解したのか、父さんの声質に"社長"としての威厳が突発的に戻った。そして、急にソファーから立ち上がった。
「今日の深夜二時、家を出る。……準備しておいてくれ。色々と、な」
そう言い残し、リビングから出て行ってしまった。おそらく一階にある書斎にでも行ったのだろう。……確かそこには昔の写真やらなにやら保存していた気がする。
「……母さん」
母親の死。
今から四年前に、俺が中学一年生の時に、母さんは肺結核で亡くなった。今の時代、結核で亡くなるケースは少ないと言われているが、母さんは元々、抵抗力が弱かったらしい。
今思えば、母さんの死から、俺達、家族の人生が急展開した。
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