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「気を付けー、礼……ありがとうごさいましたー」
やる気の無い挨拶をする学級委員長。彼がこれでは他のクラスメイトに示しがつかない。
「ハイハイみんなお疲れー」
やる気の無い挨拶を返す担任。高校の教師がこんな調子では、クラスの風紀が乱れるのは当たり前。けれど実際は荒らすような荒っぽい輩はいないかった。
高校生活が始まって入学式、体育祭を経て、行事を行う毎に、毎日がこうなった。最初は張り切っていた委員長も、黒のリクルートスーツで固めた新人教師も今ではこれ。はっきり言うと、超がつくほどの怠慢だった。いい意味で言い換えれば、"気を使わないほど仲良くなった"ということだ。
「あ、城ヶ崎と菅野。ちょっとこっち来い。追試の課題だ」
これは、いつもとは違う光景。追試なんて日頃からあってたまるものか。
頭が良いかと言われれば別だが、俺は決して勉強ができない訳ではない。いつもは"学年二位"になる位の学力は持っている、と学校の掲示板が証明している。けれど勉強不足だと当たり前だがすぐテストに出る。
「あちゃーまた追試か。あれ、カオルも遂に追試? いやーやっぱり追試は仲間が居ないとテンションが上がらないよなー」
焦る俺とは違い、まるで、追試を楽しみにしているかのように、テンションの高い男。
菅野琢也は、最近切ったばかりのショートカットの頭を右手で貪り掻きながら言った。
菅野は"頭"が悪い。
菅野の成績は良くて全教科赤点ギリギリ。悪ければ、全教科追試だ。本人曰わく、担任からは進級も怪しいと言われれたらしい。
テスト結果は先程配られ、その中で追試は俺と菅野だけ。それは俺の点数がかなり悪いという事を意味する。
「タク、うるさい。……はぁ憂鬱だ、マジ憂鬱だよ……」
「えー別にいいじゃんか。面白いぜ、追試」
「お前はな!! 俺は初なんだよ、初!!」
タクは基本的に明るい性格、俺、いや、みんなには無い物を沢山持っていた。カリスマ、って言うのだろうか。人を惹きつける何かしらの魅力を持っていた。
そんなクラスのムードメーカー的存在のタクが、日頃からふてくされてる俺とつるんでいるという事。それは一緒にいる俺にもわからない。
大体、入学式くらいの頃の話だ。気付いたら一緒にいた、というのが一番しっくり来るだろう。いつの間にか仲良くなり、いつの間にかつるむようになった。
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