借金まみれの少年のお話

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 父さんは結婚する前、小さな会社の社長だった。設立して三年で、大企業に著しく成長を遂げさせる、業界では大物だった。しかし、その成長には裏話があったのだ。  母さんとの結婚だ。  会社の成功と結婚のタイミングがぴったりと一致する。別にそれは普通の事だろう。しかし、四年前に母さんが亡くなった半年後、会社が潰れた。莫大の借金を残して。  俺は、父さんでなく母さんにカリスマ性があったと未だに思う。もしも母さんが生きていてくれていたら、何かが違ったのではないかとも思う。  しかし、そんな事を思っても今の現状は変わらない。俺は思いに踏ん切りをつけて、キッチンの椅子から立ち上がった。 「部屋に行くか…………」  俺は色々な準備をする為、自室に戻る事にした。それに、学生服を着替えないといけない。玄関先に置きっぱなしの鞄を取りに行った後、少し埃っぽい階段を登って、俺は自室に向かった。  
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