借金まみれの少年のお話

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 俺は必要な物を沢山詰め込んだリュックを持ちながら、俺の部屋の二つ隣の母親の部屋を訪れた。  ドアノブは少し汚れで霞み、触れると埃が微かに付いていた。俺はそれをしっかりと掴みながら回し、一気に開けた。 「ゲホ、ゲホ!! ……何だよ。この部屋」  中は真っ暗で、闇に包まれていた。それは当たり前。俺は電気を付けていないからだ。だが、予想以上に埃が舞っていて、部屋全体が黒ずんで見えた。  恐らく、随分と掃除をしていないのだろう。俺は一歩も母さんの部屋に立ち入っていない。つまり、父さんは掃除をしていないという事が判明した。何て不謹慎な父親だろうか。 「特に……変わった点は…………ん?」  六畳の部屋の真ん中にポツンと佇んだダンボール箱が一つあった。他の家具は目に入らなかった。それだけ、その箱の存在感が部屋全体を圧倒していたのだ。  自然と足がダンボール箱に向かって動き出す。理由は分からない。中には何も入っていないかもしれない。けれど、好奇心、探求心、心理的欲求、これら全てに当てはまらない心情が俺の足を動かす。  遂に、俺の右手の指先がダンボール箱に触れる。そのまま身体は止まらず、本能的に荒く、激しくガムテープを剥がしていった。 「……はッ!!」  気がついたらダンボール箱の殆どが大破していた。今思うとこんなダンボール箱、前は無かったと思う。先程は後先考えず開けていたが、今は疑念に包まれている。 「何なんだ。このダンボール……」  中には一冊の、何やら難しい文字で書かれた、薄気味悪い、緑色が掠れたよう色合いの分厚い本と、色とりどりのボタンがついたゴーグルが出てきた。  
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