借金まみれの少年のお話

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 おかしい。  全体的におかしい。母親からのメール。さっきの俺の行動。ダンボール箱。そして、その中にある2つの物体。考えれば考える程、謎は広がるばかりだった。 「取り敢えずまぁ、……読んで見るか」  色々と怪しい要素が満載だが、悩んだ所で仕方ない。俺はまず、本から手にする事にした。  タイトルは解読不能。何が書いてあるかさえ分からなかった。ドイツ語? いや、イタリア語か? 「あ、れ? 高貴なる……扉?」  突然、文字が動き出し、解読不能だった言葉が日本語へと変化した。普通では有り得ない事が、目の前で起こったのだ。俺は動揺を隠せなかった。  しかし、俺の考えとは裏腹に指は動き出す。右手が自動的に本の最終ページを開いたのだ。そして、隣のページの先程見た文字が、日本語に変わっていったのも目に入った。そこには、このように記されていた。 『汝の右手を最終ページに置き、隣のページの手順に従え』  この文章を黙読しているとまた右手が勝手に動き出し、少し使い古した紙質の本の最終ページに張り付いてしまった。 「くそっ! くそっ!! と、取れない……」 『次に、こう唱えよ。"我、我を犠牲に今こそ、この高貴なる扉を開かん』  そして、不意に本に書かれた文章が目に入ってしまった。途端に、俺の乾いた唇がゆっくりと、慎重に動き始めた。 「我を犠牲に今こそ、高貴なる扉を開かん」  怪しい、そして、不思議な本の条件が揃った。今、俺はそう確信した。これから何が起きるのか分からない。しかし、思う事がある。  この本に触れた事を後悔した、と。  
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