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タクと話すのが今では俺の学校での楽しみかもしれない。何より気が楽になる。しかもそれは俺だけではなく、クラス全体にまで陽気な雰囲気は影響する。
「ヨッシャー!! 俺、今回はタクより点数たけーぞ」
「私も、菅野君よりはテスト良かったー!!」
ザッとこんな感じ。菅野琢也という人物を中心にこのクラスは動いている、と言っても過言でも無いだろう。
そう、それは『魔法』みたいに。
「どうした、カオル? またいつもの癖か?」
「あーちょっとな……」
あまり意識していないのだが、深く考え過ぎる所が俺の悪い癖だ。たまに、思い詰めすぎて一点に集中してしまう時が、度々ある。これはいずれは直さないといけない事だとつくづく思う。
そんな事を考えていたら、いつの間にかタクの両手には二人分の辞書のように分厚いプリントがあった。
そしてタクは両手に片方づつある課題を、満面の笑顔で強引に"両方"手渡してきた。
「ほいコレ、カオルの分。そして俺の分もしっかりと集中して問題を解くように」
「……片方だけ貰っとく」
「えーなんでさ!! 俺の分はやってくれないのかよー!?」
「やらない。めんどくさい、ダルい、破滅しろ」
「破滅!? やめろよ?? 俺が勉強出来ないの知ってるよな、なぁ!?」
そう叫びながら、タクは恒例の頭を抱えて膝を床に着く行動を取った。そんな大げさな……そう毎度のごとく悲観するなら普段から勉強すればいいのに、とつくづく思う。
「はぁ……」
くだらないことで揉めて数分、他のクラスメイトはぞろぞろと帰宅をし始めた。俺らも早く帰らないといけないな、と思いながら今だに落ち込んでいるタクをスルーする。
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