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俺が学校の校門付近を歩いている内にはタクは追い付いてきた。俺と同じ帰宅部の癖に、無駄に足が速い奴だ。
「はあ、はあ……疲れた。酷いじゃないか。俺を置いていくなんて……」
「面倒になりそうだったからな」
「そんな事は無いぞ、俺はこうして君との青春ストーリーを楽しんでい――」
俺はすかさずタクの頭にチョップを与えてやった。これ以上のタクの発言は色々と危険性が高い上、こっぱずかしい事をぬかし始めるだろう。
今はクラスの人気者で通ってはいるが、俺はコイツの将来がある意味心配だ。最終的には変態になっているかもしれない。
「冗談、冗談だっての。いつもの悪い癖だから許してくれよ。……じゃあ、早くゲーセン行こう!!」
「お、おい。急に引っ張るなよ!?」
タクは俺の右手首を掴みゲームセンターの方角へと走ってゆく。何をそんなに急いでいるのか、俺には分からなかった。
振り向きざまに、俺は普段通っている高校に目を向けた。そこには、いつも見慣れた建築百周年を迎えたボロボロの白い建物が建っている。
今日で最後の登校になるかもしれない。そう思うと、こんなボロい校舎にも愛着が湧いてくる。
タクの足が速いせいか、それとも学校自体が小さいのかすぐに学校は小さくなり、水平線へと消えていった。
何時も通っていた通学路。まだ見えないが時々、寄り道をした古ぼけた駄菓子屋。これらも全て、見るのは今日で最後になる。
俺が、あっという間に変わり行く風景に懐かしさ感じていると、タクはそれに気づいたのか、タイミング良く走るスピードを緩めた。
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