行間 闇

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 そう彼は言い残し、やがて禍々しい気配が消える。 「おい!! 勝手に消えるなよッ!! まだ話は終わってない、終わってないんだよ!!」  その声は黒い空間で木霊し、すぐさま俺の耳へと帰ってきくる。俺は一人、ここに取り残されてしまった。  アイツは危険だ。  得体の知れない何かが俺の中にいる。本当に考えたくもない話を目の当たりにして、俺は一向に止まない寒気を感じた。  そして彼ことクライスがいなくなった事を世界が察したのか、ピキピキピキと音を立てながら黒いかけらが上から降ってきた。  反射で上を見上げると、黒い天井に亀裂が走り、僅かにできた隙間から白い光が漏れ出していた。思わず手で顔を覆った俺だが、たちまち白いエリアが広がっていった為、光を遮りきれなかった。  俺はまるで、小さな子供が完成した黒いジグソーパズルを真っ逆様にして、全てのピースをバラバラにしたような、そんな光景を目にしているようだった。 (くっ、出口は……出口はどこだ? 早く脱出しないと……!!)  精神状態はあっという間に焦りへと変わり始めた。そして、自然と右手が額へ向かう。  ……無い。あるべき筈の物が無かった。 「ッ!! 確か、あの時の衝撃でモーグルが……」  一時的だが、あの狼のようなモンスターを本当に一時的だが怯ませたあのゴーグルが無い事に、これほど不安に感じるとは思わなかった。  こうして悩んでいる間にも、白がじりじりと幅を迫りつつある。  黒だった時は安心したが、白に染まるこの空間は俺にとっては恐怖の塊しか無かった。 「考えろ。考えろ考えろ考えろォ!!」  意味もなく、ただ叫んだ。けれど、"何も考えていなかった"と思う。多分、この現実を受け入れられなかった、自分の弱さだった。  完全に白い空間になった途端に、カッ!! と無情にも光が俺を包む。俺は必死になって腕で顔を全て覆い尽くした。瞼越しでも光の強さが分かったのだ。相当の光の量だったのだろう。  そして……。  
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