王家の休日に招かれる者達

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 うっすらと見える天井。  天井から水が滴る柔らかな音が俺の耳に伝わる。そして、その幾つかの水滴が俺の顔に垂れた。 「んっ…………ん」  反射で何か布のような物を左手で握り締めた。どうやら、俺は長い間眠ってしまったらしい。霞がかったように頭がぼんやりする。  ベットの質が悪いのか古いのか分からないが、少し動く度にギシギシと軋む音。それが俺にとってはとても不快に感じさせた。  俺は訳が分からないまま、居心地の悪いベッドから身体を起こす。服装もいつの間にか、上着だけ小汚い布の白い服になっていた。  薄暗い部屋。  それがこの部屋の第一印象だ。壁はレンガで出来ており、大型の鉄格子が取り付けてある。家具はトイレ、ベッドのみだ。そして、何故か途中で落とした筈の俺のリュックがあった。  床には多くの血痕が残っており、ネズミ等の生き物特有の匂いが部屋一帯に広がっている。……少し気味が悪いな。  また、急に動いたことによるのか顔の右側と脇腹にピリッと痛みが走る。あの怪物、炎狼にやられた傷か、と認識したことで頭が覚めた。申し訳程度に顔を右手で覆ったが、どうやら収まりそうに無い。  ……ところであの体験はなんだったのか。  あれは夢だったのだろうか。夢にしては現実味がありすぎた気もする……そしてあれの言葉も気になるし、一体プレゼントとは何なんだ? 『……主人、起きましたか? 私はここですよ』  物音で気付いたのか、モーグルの声がベッドの下から聞こえてきた。  俺は右手を伸ばしてベッドの下からモーグルを取り出し、ボディに付いた埃や泥を払う。 「ここは一体どこだ、モーグル。急に場所が変ってるけど、町の中ではなさそうだな。そう言えば……あの後どうなったんだ!?」  俺は声を少し荒げて聞いた。  あの時の記憶が曖昧で今の現状が理解出来ないなかった為か、不安が胸を過ぎる。俺はその最終的な答えを知っていそうなモーグルに聞く事が得策と自然に思い立った。  そしてモーグルは、何かに安心したように、ふぅ、とため息をしては語り出した。俺はその『ふぅ』というため息を聞いただけでほんの僅かに安堵する。 「ここはアリ・フーラ・アデレード王国。それは勿論ご存知ですね。ここはその首都と呼ばれる所で、現在地はダリル・A・アデレードの城です。……まあ、正確な場所はその牢屋ですがね」  
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