借金まみれの少年のお話

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「なあカオル。今日のお前、何かがおかしいと思うんだけど……でも何がおかしいまでは分からないんだよな。学校で何かあったか?」  満面の笑顔でタクはそう聞いてきた。何が嬉しいのか、遂にはリズムにのって鼻歌も歌い始めた始末だ。今日の自分のテンションの高さに気付いていないようだな。  それにしても鋭い。  なるべくタクの前では表情に出さないようにしていたのだが、ここに来て見破られた。どこでわかったのだろうか。おかしい、とまで言われるほどボロは出していない筈なんだが……。  俺は、ひとまず落ち着いてタクからの質問の答えを返した。 「ん、そうか? 別にいつもと変わらず、普通じゃなかったか?」 「……あれ、そうかなー。じゃあ、多分俺の気のせいかな」  俺はタクを過大評価し過ぎたようだ。  タクは馬鹿だった。  どこかで聞いた事のある名言だ。確か、ガガーリンだったか。それとニュアンスが似ているは、……俺の気のせいだろう。 「まぁ、いいや。取り敢えず行こう。うわ、あと二時間とちょっとしか遊べないぜ!!」 「わ、わかったから、どんだけゲーセン行きたいんだよ!!」  相変わらず、タクは切り替えが速い。  タクは俺の手首を握り過ぎて汗ばんでしまった手を離し、俺の横に立った。そして、彼のお得意のイケメンスマイルでこう言った。 「いざ、出陣!!」 「……て、敵は、ゲームセンターにありー」 「なにそれセンスない」 「センスないはお前だ」  俺はやる気の無い棒読みで空気を読んだ。しかし、そのタクの返しはないだろう。けれどたまには、親友とこういう悪ノリも良いかも知れない。  
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