王家の休日に招かれる者達

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『まさか、あの影響で……?』  モーグルは何かボソッと呟いたようだったが、聞き取れなかった。特に気にならなかったので、追求せず、俺は同じ質問を重ねる。 「で、脱走の話なんだけど……あの鍵を壊すか、鉄格子を壊すかの二択だと思うんだが、どう思う?」  その答えを出す為に、モーグルは少し唸った。 『……物を壊す事は余り得策ではありませんね。しかも、主人は気絶していたので分からないでしょうが、今は夜中の九時ですよ。よい子はみんな寝ています』 「あっはっは、面白いジョークだな……ってアホか。牢屋にいる時点でみんな良い子な訳無いだろ。ここにいる奴ら全員悪い事して捕まってるんだから」 俺も含めて、な。不本意ながら。 『そう言われればそうですね。迂闊でした。けれど、あまり音を立てるのはどうかと……』 「そう、か。だよな。やっぱり、他の囚人に密告されるリスクがあるよな」  まず、壊す為の道具すら無い事に今更ながら気づいた。いくら荷物の沢山詰まった俺のリュックがあるからと言っても、さすがに鈍器は入っていない。  ひとまず、何か探してみる事にする。 『主人は、今日一日で頭がキレるようになりましたね』  と、暫く探している最中に、文脈関係無しにいきなりそんな事を言われて、思わず顔を少し歪めてしてしまった。 「どうだろうな」  ……俺は頭の出来が悪い、と思う。確かに普通の勉強は出来る、そして学校で最後に受けたテスト以外、学年二位をキープはしてはいた。  一位、新川望。二位、城ヶ崎薫。  ボードに張り出された成績表の紙は、この表示を永久に変えなかった。改めて、勉強は才能もいるという事を思い知ったのだ。  
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