王家の休日に招かれる者達

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 二二七位、管野琢也。  二二八人中でタクはこの順位だった。これを見る度に、ぶわっと周りから笑いがこぼれたのが覚えている。勿論、俺も笑い飛ばした。  そう言えば、タクと望は元気にしているだろうか。俺がいない事で、何か不祥事が生じていないだろうか。高校には退学届をもう出したので、結局は学校には通えなくなるのだが……まあ、大丈夫だろう。  そんなこんな考えていると、六畳弱の牢屋の捜索をあっという間に終えてしまった。やはり見た目通り汚いだけで、ベッドの下にもトイレの中にも、鈍器らしき物は見つからない。 『……何も無いようですね。』 「ああ、本当に何にも無い。床には古い血痕が無数にあるんだけどな……鈍器があってもおかしくないほど、な」  そして、少し生臭い。この血が人間の物かというのは定かでは無いが、もし同一の生物の物ならば明らかに致死量を超えているだろう。それぐらい、赤黒く床は染まっていた。  ぶつぶつと悪態をついていると、ベッドから機械音が聞こえた。音源はやはり、あれしかいないだろう。 『どうやら、私の出番の用ですね。私なら、ここから脱出する事ができますよ』 「それは本当か、モーグル?」 『ええ、本当です。鈍器を使って物を壊す訳でも無く、音を立てずに逃げ出す方法があります。なに、私に任せて下さい』  レンズに薄い緑色の光を二つ点滅させながら、自信満々にモーグルは言い切る。 『けれど、それには主人の協力が必要です。……協力、してくれますか?』 「俺の? ……当たり前だろ。俺は一体何をすれば良いんだ?」  未だにモーグルの脱出方法が読めない俺は、その考えについて好奇の目を向ける。そしてベッドに座り、モーグルの話をしっかりと聞く事にしたのである。 『では、私を掛けて下さい。主人』  ……、 「はあ、またかよ……」  
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