借金まみれの少年のお話

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 ゲームセンターの中は、静寂で、少し埃っぽかった。都会のゲームセンターは雑音が酷いと聞いたが、ここの中は逆に静寂とし過ぎて、どれくらい煩いのか予想出来ない。  客は多い日で十人ぐらい。もう潰れても可笑しく無いのだが、かれこれ二七年間、営業を続けているらしい。恐るべし『カスタム』。 「あ、マユたんあった!! やっぱりノゾミちゃんの情報は正しかったな!!」  『カスタム』はチェーン店ではない。だから中もそこまで広くはなく、内装もお世辞にも綺麗とは言えない。  そんなことからタクを見つけるのはそう難しくなかった。今日も客は少なく、従業員が一人、フロントでうたた寝をしていた。 「……幾らでその情報を買ったんだ?」 「確か三百円だったかな」  新川望(しんかわのぞみ)とは、俺の幼なじみ、かつ情報屋。俺達のC組とは違い、A組にいる自称"預言者"の女の子だ。俺からすれば、一つの情報を教えて貰うのに金を取るという、また、超がつく勿体無いオバケという認識だ。  俺が、学校で唯一話す女の子にカテゴライズされる人物と言えるだろう。と言っても、俺が話すのは、タクと望だけだが。 「そういえば、ノゾミちゃんは? 先に帰ったのかな」 タクは、巧みにレバーを動かし、フィギュアのマユたんと格闘しながら、俺に聞いてきた。 「ああ、望は部活と委員会でまだ学校にいるんじゃないか?」 「ふーん……てっ、そんな事よりも全然取れないぜ!! マユたーん!!」  タクはまたターゲットを取り損ねたらしい。……ここ程取りやすいUFOキャッチャーはない筈なのだが。  
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