俺と彼氏と非日常

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「何だよ、ジロジロ見んな」 「あ、すいません」 気が付いたら、普段の習性で直ぐに謝ってしまっていた。 ……何か違う。 しっかりしろ、俺。 「……これってさ、二次元とかでたまにみる女体化ってやつ?」 「お前、オタク?」 「……今更だからね?」 モテない男は1度は二次元に走っちゃうもんなんだ。 目の前に立つ金髪美少女…否、俺の彼氏は眉間にシワをよせてこちらを見ている。 女になって少しは表情が豊かになった気がする。 いかんいかん。 不謹慎だぞ、俺。 「とりあえず座れよ」 「あ、ああ…」 翠に促され、ソファーとテーブルの間に座る。 「お前、その位置好きなのな。普通にソファー座ればいいのに」 「いいだろ、ここ。俺ん家、和室多いし床が落ち着くんだよ。」 「……そっか。」 にしし、と、珍しく子供らしく笑った翠にときめいた。 「かわいい」 「……うざ。つか、どうせ女になるなら巨乳ロリ顔美少女になりたかった。」 「え。キャラじゃない…」 「ヤリコロス」 「……どうやって?」 「………。」 二次元では割と有り得てしまう女体化も、三次元では勿論有り得ないことで。 そんなことを素直に受け入れてしまっている俺は、どこか変なのかも知れない。 「……何だよ、オタク」 「いや、何でもない。」 でも、どんな翠でも受け入れられた自分に安心したのも事実。 幸い、翠は一人暮らしで、今日から夏休み。 のんびりもしてられないが、何とか原因を探して戻さないと…。 しかし、こんなに都合のいいことってあるもんか? 何やら考え込んでいる翠の横で、答えの出ない疑問を俺はしばらく考えることとなった。 .
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