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そこへ、沖田が通りかかる。
「あれ?壱夜さん。おはようございます!何なさってるんですか?」
「あ、沖田さん。おはようございます。今永倉さんと平助君と佐之さんでお話していたんです。」
そう答えると沖田さんは驚いた顔をした。昨日と違った口調に驚いているんだろう。だがすぐにいつもの調子に戻ってにっこりと笑いかけてくれた。
「何時の間に仲良くなったんですか?私も仲良くなりたいですー。」
駄々をこねるように沖田さんは言う。
子供みたいだな。
そう思っていると沖田さんの後ろの方から廊下を走る音が聞こえてくる。
まさかと思ったがやっぱり土方だった。
「そぉぉじぃぃぃ!まぁたお前は俺の大事な発句集を持っていきやがって!!返しやがれっ!!」
なんとも言えない形相で土方は追いかけて来る。
「もう、土方さん!そんなに怒らなくてもいいじゃないですかぁ!こんなに面白いのにぃ!」
そう言って沖田は嬉しそうに逃げ回る。
しばらくその追いかけっこを見ていると土方は疲れたのか立ち止まり、突然こちらをむいて睨んできた。
「壱夜!お前が部屋にいたら総司の侵入を防げたはずだ!何故部屋に居なかった!」
……どうやら矛先が此方にむいたらしい。なんとも理不尽な話だ。
「知るかそんなこと。だいたい見られたくないなら見つからない場所に隠して置くものだろう。」
正論を言われて何も言えなくなったのか土方はわなわなと震えている。
「壱夜は土方さん相手だと口調が戻っちまうようだな」
「だってあの人、偉そうな顔してて、あんまり好きじゃありませんし。」
佐之さんの言葉に迷いなくそう言った私に沖田さんが爆笑し始める。
すると土方は凄い形相で睨んだかと思うと、突如人間とは思えない速さで此方に向かって走って来た。
「やっばっ!!」
反射的に走り出した私は沖田さんと同じ方向へ逃げる。
「沖田さん!!外に逃げましょう!!」
「そうですね!!」
そう言って一緒に屯所の外へと逃げていった。
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