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あ、危なかった…。
こんなに自分が動揺すると思わなかった。
芹沢とは違って、
あの時は突然のことに驚いて思わず押し退けようとしたが、嫌悪感なんて感じなかった。
戸惑いだけだった。
…って事は嫌じゃなかったのか…?
そう考えるとまた顔が熱くなる。
そのとき額に手を乗せられて私は身体をびくりと振るわせた。
斎藤さんが熱が無いか確かめているのだ。
「…やはり熱があるぞ。壱夜、直ぐに休め」
「え、あ、いや、これは熱があるわけではなくて…」
「熱がないというのなら、何故顔が赤い?」
「それは…」
何と言っていいのか解らず次の言葉が出ない。
すると、今まで睨み合っていた土方と青が此方を向いている事に気付いた。
「……何やってんだ、てめぇら」
「何って…」
言われてみて今の状況を確認すると、私は斎藤さんの腕の中にいることに気付いた。
倒れそうになった時に引き寄せられてそのままだったのだ。
「こ、これは違うんです!壱夜が倒れそうになったので助けた拍子にこうなって…!」
珍しく斎藤さんがあたふたしていて私は可笑しくなって笑ってしまう。
青が怪訝な顔を見せた。
「あんた、蓮になにしているのさ」
「だから助けた拍子にこうなって…!」
斎藤さんは必死に説明するが、彼らは信じていないようだ。
「壱夜…!」
助けてくれ、という目を向けられたので私も加勢する事にした。
「本当だ。斎藤さんは私の顔が赤かったから熱があるんじゃないかと確かめようとしていたのに、私がそれに驚いて後退った拍子に足が縺れて倒れそうになったのを助けてくれたんだ」
その私の言葉に斎藤さんはこくこくと頷く。
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