始まり

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京の街中へと逃げて来た私達は、やっとのことで土方を振り切ることができた。だが… 「ほっとしたらお腹がすきました。」 「朝食を食べてなかったですもんね。」 そう、朝食を食べる前に土方に追いかけまわされたんだ。お腹が減るのは無理ないだろう。 「どこかで朝食を食べましょうか」 「そうですね。」 そう言って入ったのは甘味屋だった。 「…沖田さん。朝食に甘味を食べるんですか?」 「ええ!朝から甘味が食べれるなんて、これ以上の幸せはありませんよ!」 至極嬉しそうな顔でそう言われると何も言えなくなる。 とりあえず、自分も何か頼まなければ。だがどれを見ても朝に食べれるものではない。だからといって何も頼まないのも気が引ける。 「壱夜さん?頼まないんですか?」 「えっ?あ、頼みますよ。ええと、お団子を二つ下さい。」 そう言うとお店の人がにっこりと笑って「わかりました」と店の奥に歩いていった。 「それにしても土方さん、あの顔は傑作でしたねぇ・・・ぷぷっ」 沖田さんはそう言って笑い始める。土方はあの形相のまま走り続けていたため途中で疲れたときになんとも言えない情けない顔になっていたのだ。 そのことだと解かったため私も微かに笑う。するとそれを見た沖田さんがびっくりした顔で見つめてきた。 「沖田さん?」 「え、あ、壱夜さんもそんな風に笑ったりするんですね。会ってから無表情でいるところしか見ていなかったので驚いてしまいました。」 「そうですか?」 自分では自覚はないが、自分は無表情でいることが多いらしい。 「はい。なんか斉藤さんみたいです。」 「斉藤さん?あの人は無表情じゃないですよ。目をみれば大体解かります。」 斉藤さんは昨日少し話しただけだが、特に無表情とは思わなかった。佐之さんから助けてくれたとき、彼は自分に対して優しい目で見ていてくれた気がする。 「壱夜さんは、腹の探り合いが得意なのかもしれませんね。あ、来ましたよ!」 会話をしているうちに頼んでいたものが出てきた。すると、沖田さんの頼んだ量に絶句する。 「沖田さん…私、貴方には敵いません…」 「え?」 お団子五つにお汁粉が五つ。朝人間が食べれるとは思えない量だった。
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