愛情

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「すごい…」 佐々木がぼそりと呟く。 私は最近稽古に出ていないし、巡察に出たことも数えられるほど少ないので、他人に戦闘しているところを見られることが極端に少ないのだ。 「あれだけやれば、暫くあの人達は大人しくしているでしょう」 「だな。にしてもお前は強いなぁ。」 そう言って左之さんは肩を組んできた。 「そんなことないですよ。私は人より少し素早いだけです。 それと、重いです」 すまんすまん、と言って左之さんは離れた。 それから決められた区画を回り、特に異常も無いので私達は屯所に帰る事にした。 街を歩いているときに、佐々木が何かを探しているように忙しなくきょろきょろしていることに気が付いた。 「佐々木さん?」 私の声に佐々木さんは驚いたように肩を揺らした。 「な、なんですか?」 「いや、別に何でもないんですが…何を探しているんです?」 「え!い、いや何も探してませんよ」 そう言う割に挙動不審過ぎる。 暫く彼を見つめていると、以前佐々木が街娘と逢っていた事を思い出した。 「…もしかして、あの時の女子を探しているんですか?」 少し声を潜めて問うと、彼は顔面蒼白にして口をぱくぱくしていた。 「や、やっぱり壱夜さんあの時見ていたんですね」 「それはもうしっかりと。…すみません、勝手に。」 申し訳なくて謝ると、佐々木は首を横に振る。 「いえ!壱夜さんは悪くないです!私が勝手に抜け出して逢っていたのが悪かったんです。 それに、貴方は誰にも言わなかったじゃないですか」 「それは…」 何だか邪魔をしてはいけない気がしたから。 そう言えずに私は視線を逸らした。 そこで、ふと気がつく。 佐々木が探していたということは、彼は彼女に会いに行きたいのではないのか? それなら、 「行ったらどうです?」 「え?」 「会いに行ったらどうですか?もう巡察も終わってますし、大丈夫だと思いますよ」 「でも…」 「左之さんには上手く言っておきますから。さあ」 一瞬佐々木は考える素振りを見せたが、直ぐに私に向き直る。 「有り難うございます!」 そう言って走り去っていった。 「あれ?佐々木はどうした」 「用事があるみたいですよ」 左之さんの言葉に私は微笑みながら答えた。
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