始まり

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屯所に戻ってくると仕事をするために土方の部屋へと行った。もちろん、怒られる覚悟してだ。 「土方、入るぞ」 そう言って部屋に入る。すると以外にも土方は怒っていなかった。 「壱夜。お前昨日と今日で何か思い出したことはあるか?」 真剣な面持ちで聞いてくる。それに首を振ると、溜め息をつかれた。 「だが、気づいたことがある」 そう言って先程思ったことを口にすると、土方は考える素振りを見せた。そして確かめるように口をひらく。 「じゃあ聞くがお前、今のこの壬生浪士組の隊内の事について何か解かるか?」 昨日入隊したばかりの私にまだ詳しくは内情を話してはいない。事実を確かめるには丁度いい質問だ。 「…たしか、今芹沢派と近藤派に別れて少しいざこざがあるはずだ。昨日芹沢に会った感じだと、彼は少し強引な金策をしているようにみえた。それに近藤派は彼にあまり良い感情は持っていないようにもみえる。 土方は芹沢達の扱いに困っているだろう?」 そう言うと土方は驚いた表情を見せる。 「少しの情報で此処まで見抜くとはな…。お前は客観的に物事を見定める能力があるようだな。」 関心した様子で頷いている。 「お前の言ったことはすべて当たっている。俺たちは思い掛けなくいい逸材を手に入れたのかもな」 にやりと土方は笑った。 「それと、少し報告がある。」 そう言うと土方は「何だ」と首を傾げる。 「昨日感じた妙な気配を、さっきまた京の街中で感じた」 「何?それもまた妙だな。俺達を監視しているのなら総司とお前を追う利益は無ぇはずだ。…もしかしたら」 そう言って此方を見据える。 「お前を監視しているのかもしれねぇ。」 確かにそう言われてみればしっくりくる。何故自分が監視されているか解からないがきっと何かあるんだろう。記憶の手がかりになるかもしれない。 それにしても少しの時間でその可能性に気づいた土方も凄い判断力がある。 土方を少し見直した瞬間だった。
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