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「てめぇ、口調が無礼なのは俺に対してだけか」
「だって土方、あんまり好きじゃないし」
その私の発言に土方はさらに睨み返してきた。山南さんと近藤さんは苦笑いだ。それに対して沖田さんは笑いを堪えているようだった。
「ぷぷっ!土方さん、相当嫌われてますねぇ」
「うっせえ!」
「そうやってすぐ怒るから嫌われるんですよ」
沖田さんと土方の会話を聞いていると近藤さんが口を開いた。
「壱夜君。君の出身はもしかしたら江戸の方かもしれないね」
「え?どうして分かるんですか?」
「味噌汁の味付けが京のような薄いものじゃなく江戸の方の濃い味付けだからね。試衛館にいた私たちの舌に合うんだよ」
「そうなんですか」
近藤さんの言葉に納得する。
試衛館とは近藤さんたちが京に来る前にいた天然理心流剣術の道場だ。確か江戸にあったとか。
そう考えて苦笑する。こんな知識、一体どこで身につけたのか。
それを見ていたのか土方は溜め息をつきながら言った。
「焦ることねぇよ。ゆっくり記憶を探せ。焦ると冷静に判断できなくなるぞ」
その言葉に驚いた。優しい言葉をかけてくると思わなかったからだ。呆けていると沖田さんがにやにやしながら土方に言った。
「あれぇ、土方さん。そんな優しいこと言うなんてらしくありませんよぉ?」
「うっせぇ!言ったら悪ぃか!」
「別にそんなこと言ってないじゃないですか」
また土方と沖田さんのやり合いが始まった。それを見て少し笑うと私は土方にお礼を言った。
「ありがとうございます。土方さん」
その様子を見ていた人達は皆驚いた顔をする。何故そんなに驚くのだろうか。
「いやはや、壱夜君の笑顔は初めてみましたねぇ」
「その顔の方が無表情よりもよっぽど良い」
山南さんと近藤さんが口々に言う。
「素直にやりゃあ、敬語使えるんじゃねぇか」
「土方に言われたくない」
「てめぇぇ壱夜ぁぁ!」
すぐに食べ終え片付けるために逃げるように席を立った。
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