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「すみません、副長。逃がしてしまいました」
「いや。問題ねぇ。これで暫く奴はこないだろう」
土方の言葉に山崎は「はい」と答えてまたどこかへ気配を消して行ってしまった。
「ちから…」
その私の呟きが聞こえたのか土方が近寄ってきた。
「お前は人間離れした力を持ってるとおもうぜ?総司に強いと言わせるし、山崎みてぇにすばしっこいし」
「そうか?」
「そうだよ。自覚ねぇのかてめぇは」
「さぁ?」
そんな会話を続けて巡察を終えて帰ると沖田さんが入り口で待っていた。
「おかえりなさい、土方さん、壱夜さん。お土産はなんですか?」
「ねぇよ」
「ええっ!!こんなに楽しみにして待っていたのに!!」
大袈裟に項垂れる沖田さんに苦笑して「今度買ってきます」と言うと、土方は不機嫌な顔をして「甘やかすな」と言った。
「甘やかしてるのはどっちですか」
「何か言ったか?」
「別に何も」
私は知っている。お茶菓子を出すと必ず残しておいて沖田さんにあげているのを。
沖田さんと二人で笑いあうと、土方は眉に皺をよせた。
「てめぇら。言いたいことがあるならはっきりいいやがれ」
「「別に何もないですよーだ」」
そうして二人で土方から逃げ回る。今日二回目の追いかけっこが始まった。
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