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「あれ?この前の…誰だっけ?」
「吉田に高杉か」
そっけなく答える。お店の人にお持ち帰りのお団子をいくつか頼んでから、また二人を見た。
「ええと…壱夜だったか?君は壬生浪士組にいるの?」
吉田が怪訝そうに聞いてくる。
「そうだ。あんた達長州には目障りな存在かもな」
そう言うと驚いた顔で此方を見てきた。
「なぜ俺達が長州だと分かる?そういえばこの前も俺達の名を言い当てたな。お前、何者だ?」
「何者だと言われても。ただの男だ」
そう答えると高杉は不機嫌そうな顔になる。それを吉田が宥めてから此方を向いた。
「わかった、じゃあ君の名前を教えてよ。俺達の名を知ってるんだ。知らないと不公平だろう?」
そう言う問題じゃないだろう。そう思ったがなんだかこの吉田のことがもう少し知りたいような気もしてきて、渋々と教えた。
「……壱夜蓮だ」
「へぇ、蓮ちゃんか」
「!!」
吉田は私が女だと気づいたようだった。
その時店の人がお団子を私にわたしてくる。それと同時に山崎さんが店の入り口から声をかけてくる。私は吉田と高杉に「失礼」といって足早に山崎さんの所に行った。
「あの子、気になるなぁ」
「なんだ、お前男色なのか?」
「違うよ馬鹿杉。あ、もしかしてあの子が女の子だって気づかなかった?」
「女ぁ!?」
そんな会話は私の耳には届いてこなかった。
「さっきの奴らは誰や?」
「あ、ちょっと話しかけられただけです」
「そう」
山崎さんは、何だか探るような目で見てくる。
それに苦笑しながら屯所に向かって歩く。彼らの正体を話したら私もまた間者だと疑われるだろう。そんなややこしいことになりたくない。
「この間沖田さんと甘味屋に行った時にも会った人たちなんです。ちょっとした顔見知りですよ」
ここまで言っておけば、これ以上踏み込んでこないだろう。
予想通り山崎さんはそれ以上聞いてこなかった。
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