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「おめぇも大阪について来い」
「はぁ?」
帰って早々土方にそう言われた私は素っ頓狂な声を上げた。
「いきなりなんなんだ!」
「俺も行くことになったんだよ。出発は明日だ。準備をしておけよ」
そう言って土方は自分の部屋に戻っていった。
「ちっ!」
悪態をついていると斉藤さんが後ろから声をかけてきた。
「どうしたんだ壱夜。初めて見る顔だぞ。凄い顔をしている」
「聞いてくださいよ斎藤さん!!土方ったらいきなり明日の大阪行きについて来いって言うんですよ!」
必死に訴えると斉藤さんは少し引いていたがちゃんと話を聞いてくれた。
「そうか。お前も行くことになったのか」
「”も”?ってことは斉藤さんも行くんですか?」
「ああ」
「それなら行きたいです!私一度ゆっくり斉藤さんとお話してみたかったんです!」
土方への怒りよりもその嬉しさが勝ってパッと笑顔になる。すると斉藤さんは絶句したような顔になった。
「斉藤さん?」
名前を呼びかけると次は顔が真っ赤になる。
「あ、い、いや、なんでもない。今日は何やら調子が悪い。先に失礼する」
「だ、大丈夫ですか?後でお部屋にお茶でも持って行きますか?」
「いや、大丈夫だ。少し休めば直る」
「そうですか?」
「ああ。すまない」
そう言って足早に去ってしまった。本当に大丈夫だろうか?
暫くその場で考えていると、佐之さんが声をかけてきた。
「ありゃ、斉藤はお前に惚れたな」
「え?そんなこと無いとおもいますよ?」
普通にそう返すと佐之さんは少し呆れ気味に笑う。
「お前、天然のたらしだな」
「?」
佐之さんは何を言っているんだろう。
そこではっと思い出す。
「あ!!」
「どうした?」
「食事の買い物をするのを忘れてました!源さんの所へ行ってきます!」
「あ、ああ」
佐之さんに挨拶をしてから源さんの部屋に走り出した。
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