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それでも私は口を開かない。ただぼうっと庭を見つめるだけだ。それに痺れを切らしたのか土方が怒気の篭った声で怒鳴ってきた。
「てめぇ、話聞いてんのか!どうしたかって聞いてるんだよ!」
それを斉藤さんが宥める。それからまた此方を向いて聞いてくる。
「本当にどうしたんだ。口に出した方が楽になると思うぞ。それとも俺達には言えない事なのか?」
その質問に首を振る。
「なら、話してくれないか?」
斉藤さんが優しく言う。土方は頭をかきながら近くの柱によっかかった。そして私は渋々と言葉を紡ぐ。
「自分でも信じられないんです。だから、嘘だと笑われるかもしれません。自分で何度も否定しても、やっぱり同じ結論に辿り着くんです。でもやっぱり信じたくない」
脈絡のない話に二人は戸惑っている。
「つまりなにが言いてぇんだ?」
土方が結論を促す。
「…私、今日何度も同じ情報が頭に浮んでいました。力士達がつっかかって来たときも、その後の騒動のときにも。ありえるはずがないのに。何度もなんども。幾ら否定して気づかない振りをしても駄目だったんです。
何故か解かっていたんです。…次に起こることが」
その言葉に土方と斉藤さんは顔を見合わせ、驚いた顔をする。土方がさらに言葉を促した。
「どういうことだ?」
私はゆっくり言葉を紡いだ。
「今日何が起こるか解かっていたんです。結果まで寸分違わずに」
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