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より実戦に近いから、という理由で木刀を渡され庭で沖田と向かいあう。始めは周囲の視線が痛かったが、構えると気にならなくなった。
「構え方に隙がない。あいつ、強ぇぞ」
そう言ったのは体つきががっしりとした男――永倉 新八だった。
記憶にはなくても、体は憶えているようだ。不思議と負ける気はしなかった。
「それじゃ、行きますよ―壱夜さん!」
そう言って沖田は打ち込んできた。木刀の軌道を読んで最小限の動きで弾く。
「っ!!」
沖田は予想外だったのか、少し驚いた顔で此方を向いている。
確信した。
自分は戦い方を知っている。
そう思っていると、沖田が土方に向かって口を開いた。
「土方さーん。これ、私が確実に負けますよ。」
すると土方や近藤、他の人々も驚いた顔で此方に近寄ってきた。
「総司にここまで言わせるとはな。他にやるのには惜しい存在だ。」
土方が此方を向いてニヤリと笑う。
「とりあえず、平隊士からだな。それと、暫くは常にこいつらの誰かと行動しろ。記憶がないのに一人でフラフラされたら困るからな。」
そう言うと土方は近藤と自分の部屋に戻っていく。
それと同時に他の人々が集まって来た。
「お前すげぇな!あの総司にあそこまで言わせる奴なんかそうそう居ねぇぞ!あ、俺藤堂平助ね!これから宜しくな!」
そう小柄な少年が手を握ってブンブンと振ってくる。
「あの…ちょっと…」
戸惑っていると別の男が頭にポンと手を置いてきた。
「俺は原田佐之助な。佐之でいい。しかしお前、平助よりもチビだなぁ。何処にあんな力があるんだ?」
原田――いや、佐之さんはべしべしと頭を叩いてくる。
「いや、だから…」
嫌とも言えずおろおろしていると、それに気付いてくれたのかもう一人の男が佐之さんの手を掴む。
「おい、壱夜が嫌がっているだろう。少し手加減してやれ。」
「おお、すまんな壱夜。仲間が増えて嬉しくてよ。それにしても斎藤、お前が人に興味持つの珍しいな。いつもは無関心なのに。」
原田がそう言うと「今日はたまたまだ」と言って斎藤は去ってしまう。
「あれが、斎藤一か?」
そう聞くと沖田が「そうですよ―」と楽しそうに言ってくる。
「それにしても壱夜さん、君は何処から来たんでしょうね?私はあんな刀の型、初めてみましたよ。」
沖田はそう言うとまじまじと見つめてくる。
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