始まり

4/27
前へ
/406ページ
次へ
より実戦に近いから、という理由で木刀を渡され庭で沖田と向かいあう。始めは周囲の視線が痛かったが、構えると気にならなくなった。 「構え方に隙がない。あいつ、強ぇぞ」 そう言ったのは体つきががっしりとした男――永倉 新八だった。 記憶にはなくても、体は憶えているようだ。不思議と負ける気はしなかった。 「それじゃ、行きますよ―壱夜さん!」 そう言って沖田は打ち込んできた。木刀の軌道を読んで最小限の動きで弾く。 「っ!!」 沖田は予想外だったのか、少し驚いた顔で此方を向いている。 確信した。 自分は戦い方を知っている。 そう思っていると、沖田が土方に向かって口を開いた。 「土方さーん。これ、私が確実に負けますよ。」 すると土方や近藤、他の人々も驚いた顔で此方に近寄ってきた。 「総司にここまで言わせるとはな。他にやるのには惜しい存在だ。」 土方が此方を向いてニヤリと笑う。 「とりあえず、平隊士からだな。それと、暫くは常にこいつらの誰かと行動しろ。記憶がないのに一人でフラフラされたら困るからな。」 そう言うと土方は近藤と自分の部屋に戻っていく。 それと同時に他の人々が集まって来た。 「お前すげぇな!あの総司にあそこまで言わせる奴なんかそうそう居ねぇぞ!あ、俺藤堂平助ね!これから宜しくな!」 そう小柄な少年が手を握ってブンブンと振ってくる。 「あの…ちょっと…」 戸惑っていると別の男が頭にポンと手を置いてきた。 「俺は原田佐之助な。佐之でいい。しかしお前、平助よりもチビだなぁ。何処にあんな力があるんだ?」 原田――いや、佐之さんはべしべしと頭を叩いてくる。 「いや、だから…」 嫌とも言えずおろおろしていると、それに気付いてくれたのかもう一人の男が佐之さんの手を掴む。 「おい、壱夜が嫌がっているだろう。少し手加減してやれ。」 「おお、すまんな壱夜。仲間が増えて嬉しくてよ。それにしても斎藤、お前が人に興味持つの珍しいな。いつもは無関心なのに。」 原田がそう言うと「今日はたまたまだ」と言って斎藤は去ってしまう。 「あれが、斎藤一か?」 そう聞くと沖田が「そうですよ―」と楽しそうに言ってくる。 「それにしても壱夜さん、君は何処から来たんでしょうね?私はあんな刀の型、初めてみましたよ。」 沖田はそう言うとまじまじと見つめてくる。
/406ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2149人が本棚に入れています
本棚に追加