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「そうか、やはりな」
はぁ、と土方は溜め息をつくと頭を掻いた。
「あの…土方。私は…っ!」
なんとか言い訳をしようとするが、上手くまとまらない。
焦りと緊張が頂点に達して、私の瞳から涙が溢れ落ちた。
その様子を見て土方は目を丸くする。
「お、おい…泣くことねぇだろうが」
珍しく土方は焦っているようだが私は気にしてられなかった。
涙を止めようとしても次々と溢れてきてどうしようもない。
「…っ……くぅ…!」
私の口からは、もう言葉にならない呻くような声しか出て来なかった。
決して土方や皆を裏切っている訳ではない。
だからどうか、私を追い出さないで…!
懇願するように、もう涙でぼやけてよく見えない土方を見つめる。
「ったく、涙は女の武器、なんてよく言ったものだな…」
土方はそう呟くと、近くに寄ってきてそっと私を包み込んだ。
「ふぇ…?」
予想外の出来事に驚いて目を見開いていると、土方が耳元で囁いた。
「大丈夫だ、もうお前を疑ってはいねぇ。
…もう俺達の仲間だ。」
「ひじか…た?」
信じられなくて名前を呼ぶと、土方は私を安心させるように頭を撫でる。
「いつも気を張ってるてめぇが、こんなことで涙を見せたんだ。…もう間者だとは思ってねぇよ。今ので確信した。」
「ほんとに…?」
土方を見上げるようにその瞳を見つめると、普段は見せない優しい瞳で私を映していた。
それに安心して私は土方の胸に顔を埋めた。
「壱夜?」
今日だけだ。
こんなに気が弱くなってしまうのも、本音を見せてしまうのも、土方に甘えてしまうのも、全部。
明日からはこの人の役に立つようにしっかり働こう。
居場所をくれた、この人のために。
そして私の意識は闇に沈んでいく。
「おい、壱夜?」
土方の声が遠くなる。
額に手が当てられている気がする。
完全に意識を手放す瞬間、
「おめぇ、熱があるじゃねーか!」
土方の慌てる声が聞こえた気がした。
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