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壊す
私ね、廃墟が好きなの。
何かのパイプとか壁とか土とかで出来たごみの山を夕日のオレンジが照らす。
心なしか少し汚れた雲。
そんな雲を、何か他の形に見えるなんて言うロマンチックな人はいない。
荒れ地になった町には動物も人もいないでしょう。
春になるとどこかから飛んできたすっかししなびた花びらが廃墟にやってくる。
夏になると濃い影も少し物憂げに夏の虫の声を聞いている。
秋になると火をあげる赤い夕日に身を焦がされる。
冬になると降り積もる雪に凍らされ陽を浴びてやがて溶けていっても見えない影の微妙な隙間を湿らす雪解け水がやっと乾いても動かずじっとしている。
瓦礫たちは朝を迎える。
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