2.新月の揺りかご

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「あいつもそれは同じだと思うよ。僕が未だに鈴音を愛しているっていうのも知っていて、責任を取るという言葉を了承したんだから」 「そんな簡単に愛しているなんて、言わないで……っ!」 「僕にその資格は無いのは分かってる。分かっているけど、あの我が儘だけは忘れないで欲しいんだ」 「……お願いだから……。何も言わないで。さようならって言って」  絶対に離れるものかとでも言うかのように、身体をさらに密着させて、私の髪に頬を擦り寄せる。 「僕は忘れない、絶対に」 「――お願い。……お願いだから……、こんなこと」  こんなことしないで、と言う言葉が途切れてしまった。  馬鹿だな、私。  信じてくれと言った先輩を、信じて。  恋焦がれて、浮かれている自分が。  でも。でも、ね。  先輩、大好き。  愛しているよ。  どうしようもないくらいに。  「忘れないで」って言うけれど、それは難しいよ。  たから、いっそのこと。  温もりを感じていられる幸福感を味わったまま、今日を最後に死んでしまえたらいいのに。  神様はそんな願いを叶えてくれない。  そんなことは分かっている。  ぐちゃぐちゃな気持ちを抱いたまま。  私は人目も気にせず、大声を上げて泣くことしか出来なかった。  私の大切な陽だまりの中で。先輩が告げてくれない別離の言葉を、心の中で言いながら。
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