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ぽつり、ぽつり。
ロフトから出て来たときには、私の心情を表すかのように無情の雨が降り始めていた。
慌ててアーケードの下で雨宿りをする人や駅の東口へと駆け出していく人、様々な反応をしている。
ずっと、手は繋いだままだ。
ロフトの出入り口で森川さんは見上げて空模様を確認していた。
「……ごめんなさい……」
「ん? 何が?」
「迷惑、かけてしまって」
俯いたまま謝罪する私の頭を撫でながら、「ああいう修羅場は仕事で慣れてるから気にしないで」と言ってくれた。
この温もりや優しさに我慢していた涙が一気に溢れ出してきた。
慣れていると言ったって、良い気持ちなんてするはずがない。
それなのに、どうして森川さんは私に対してここまで優しくしてくれるのだろう? こんなことをしてくれる必要なんて無いのに。
とうとう泣き始めてしまった。
「どうして、ですか?」
「え?」
「どうしてそこまでしてくれるんですかっ!? そんな価値、私には無いのにっ!?」
大声で泣き叫んでいた。
感情が爆発して。
頭の中はとても混乱していた。
「森川さんにそこまでしてもらう理由なんて、ないのにっ!!」
「理由なら、あるよ」
「……え?」
「言っただろ。君のことが好きだって」
また腕を引っ張られて、強く抱き締められながら二度目の告白を聴く。
森川さんの片腕はしっかりと腰に回されている。
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