5.偽りの微笑みを

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「目、覚めた?」  ぼんやりとしている状態だった。かろうじて、その声に頷ける。  ……ここ、どこだったっけ?  そんなことを働かない頭で考えようとする。   「ごめん。やっぱり無理させちゃったみたいだね」  労わってくれる声と髪を撫でてくれる大きな掌が心地良い。  特有の匂いと一緒に肌が汗ばんでいるのが感じる。ふわりと漂う爽やかなオードトワレの匂い。それも心地良い。  背中には、しわくちゃのシーツの感触がする。  どうしてだろう。  とっても喉が渇いてる。何か返事したいけれど、上手く言えないし。  そのとき、口が塞がれて何かが注がれる感触がした。  ああ、水だ。  それが今の私にはとても欲しがっているものだったから、素直にそれを飲み込んだ。何度もその行為を繰り返していると、水が雫となって頬を伝い落ちていく。  喉が潤うと、自然と違うものが欲しくなってくる。  体のあちこちが痛いし、下半身は鈍痛があるというのに。それでも欲しくなって仕方がない。  自然と舌が絡み合い、深くなっていく。  今度は水ではなく、絡み合って出来上がった二人分の唾液を飲み込んだ。  唇が離れる瞬間、唾液が細長い糸の様に伸びていく様を私は見ていた。
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