1.砕けた砂糖菓子

6/9
64人が本棚に入れています
本棚に追加
/60ページ
 今日の作業には五人ほど参加していたが、午後になると用事や部活で三人いなくなっていたのでここには私と先輩しか居なかった。  安西先生もPTA活動があるとのことで、今日は出勤していない。  毎日来ている場所なのに、ちょっとしたことでこんなにも雰囲気が変化してしまう。何気ないことかもしれないけど、私にはそれが新鮮。  キュッキュッと擦れる音が近付いてくるので、私が戻ってきたのが分かったみたい。  私の方を振り返ってくれて、「ご苦労様」と労いの言葉を掛けてくれた。私も先輩に労いの言葉を返すと、嬉しそうに笑った。 「あのさ、桜井さん」 「なんですか、先輩?」 「すごくプライベートなことだけど、訊いても大丈夫かな?」  プライベートなこと? なんだろ?  首を傾げつつも黙って頷いた。 「付き合っている人とかっている?」  あまりにも意外な質問に私はあっけにとられ、目を大きく見開いてきょとんとした顔をしてしまった。  え? ええっ!?  確かに、今、付き合っているかどうか訊いたよね!?  さっき妄想していたときに変な顔しちゃったのかな、私!? うわ、そうだったらどうしよーっ!  「えっと、……いる?」  この言葉で、本当に質問されているんだと実感した。  でも、急にそんなことを訊くんだろう? 先輩の意図が全然理解出来ない。
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!