1.砕けた砂糖菓子

9/9
64人が本棚に入れています
本棚に追加
/60ページ
「その責任の一端は、そういう身体に開発した俺にもあるけどな」 「責任でも取ってくれる訳?」 「鈴音が望むなら、いつでも」 「……その言葉、信用しちゃうよ……?」  傷付いた幼子のような表情を私がすると、必ずこの人はいつでも私が望む言葉を言ってくれる。  出逢ったときから変わらずに、ずっと。  鍛えられた裸の上半身を起こすと、強引に腕を引っ張り込んで、強く抱き締められていた。 「いいよ」  耳元で囁かれる。  生温かい息を感じて、全身が粟立つ。そして、私は胸に顔を埋めてこの人に甘えた。  人肌の温もりに包まれていると安堵する。  一定のリズムを刻んでいる鼓動を聴いているのが心地いい。 「このまま寝ちゃっていい。ちゃんと目覚ましを六時にセットしておくから」  静かに頷くと、赤子をあやすような仕草で私の背中で軽く叩き始めた。  だんだんと眠気が襲ってきて、深淵の世界へと誘われてくる。 「おやすみ」  ぼんやりとした意識の中で、優しさに満ちた声を聴いたような気がした。
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!