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「その責任の一端は、そういう身体に開発した俺にもあるけどな」
「責任でも取ってくれる訳?」
「鈴音が望むなら、いつでも」
「……その言葉、信用しちゃうよ……?」
傷付いた幼子のような表情を私がすると、必ずこの人はいつでも私が望む言葉を言ってくれる。
出逢ったときから変わらずに、ずっと。
鍛えられた裸の上半身を起こすと、強引に腕を引っ張り込んで、強く抱き締められていた。
「いいよ」
耳元で囁かれる。
生温かい息を感じて、全身が粟立つ。そして、私は胸に顔を埋めてこの人に甘えた。
人肌の温もりに包まれていると安堵する。
一定のリズムを刻んでいる鼓動を聴いているのが心地いい。
「このまま寝ちゃっていい。ちゃんと目覚ましを六時にセットしておくから」
静かに頷くと、赤子をあやすような仕草で私の背中で軽く叩き始めた。
だんだんと眠気が襲ってきて、深淵の世界へと誘われてくる。
「おやすみ」
ぼんやりとした意識の中で、優しさに満ちた声を聴いたような気がした。
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