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「昔はあたしの後について回ってたもんね、冬夢は」
……お蔭様で『姐御』と呼ばれてたけどね。
ぐいっ
「きゃっ!」
いきなり冬夢があたしを引き寄せる。
「春美、何時までも昔の俺じゃないからな」
息がかかるくらいの顔の近さで喋る。
冬夢ってこんなに力強かったっけ?
それに、あたしの事『春美ちゃん』じゃなく『春美』って言ったし、一人称も『僕』じゃなく『俺』になってた。
「…………」
冬夢はあたしの知らない冬夢になったの?
そんなの……。
寂しいよ。
でも、仕方ないよね。
あたしも冬夢も大人へと成長していってるんだから。
「ブッ!」
あたしから顔を逸らし、冬夢は思いっきり吹き出した。
「……何で笑うのよ」
何であたし笑われたの?
いや、マジで。
「俺は昔と変わらないからそんな顔するなよ」
冬夢はケラケラ笑った。
まるであたしの心を見透かしたように……。
「べ、別にあたしは冬夢が変わろうと変わらないだろうと関係ないんだからね」
……やば。
いつもの調子で言っちゃった。
冬夢、泣かない……よね?
「うほっ。
ツンデレ、キター!」
泣くどころか、冬夢はガッツポーズをする。
……何故?
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