309人が本棚に入れています
本棚に追加
「夏樹はパパに似て不器用だからね。
ホントは春美を心配してるのよ」
ママは夏樹をフォローする。
「わかってるよ、ママ」
あたしはコーヒーを飲み気持ちを落ち着かせた。
「パパ、今度はいつ帰ってくるかしらね?」
ママは心配そうに言う。
あたしのパパは考古学者。
世界各地をあちこち飛び回って、あまり家には帰ってこないんだ。
たまに帰ってくると妙ちきりんな埴輪や土偶を持って帰って来たりする。
少し変わったパパだけど、あたしは大好きなんだ。
勿論、ママも夏樹もパパが大好き。
「そのうち『ただいま~』って呑気に帰ってくるわよ」
……いつもパパは突如帰ってくるのよね。
「そうね。
あら、春美そろそろ行かないと間に合わないわよ」
ママは時計を見て言う。
「やだ、こんな時間!
いってきます!」
鞄を鷲掴みにして、あたしは慌てて家を出た。
「いってらっしゃい。
気をつけてね」
慌てるあたしをママはマイペースに見送る。
ママもパパもマイペースで穏やかな人。
絶対に頭ごなしに怒ったりしないし。
夏樹もマイペースであまり怒らない。
思いっきり、パパとママの血を受け継いでるのがわかる。
あたしは……。
どちらかというとせっかちだし、気が短い。
ホントにあのパパとママの子なのかと、たまに自分でも思う。
いや、まぎれもなくパパとママの子なんだけどね。
うん。
最初のコメントを投稿しよう!