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「森羅万象全ての生き物に感謝し……」
「……」
おや?
おじさんが呪文を唱えている
地球を破壊しようとしているのだろうか
「私の娘達を幸福へと導いておくんなまし」
「……」
おじさんがふざけ始めた
神聖な儀式ではないのだろうか
「……姫雛、祈りを」
「……はい」
「……」
どんどん真面目な空気になっていく
さっきのおじさんのおふざけはスルーか……
心なしかおじさんが悲しい顔をしているように見える
「莉菜……祈りを」
「は……はい」
「……」
そもそもこれは何の儀式なんだろう
家内安全?
いやいや、双子は家外に行くんだ
だったら
子宝祈願?
女子高で子供は出来ないな……
無病息災?
心配ないだろう
体力増強?
なんと破廉恥な
体力増強して何をするというのだ
第一ピンポイントすぎる
「さて……終わりだ」
「……じゃあ、行くから」
「ちゃんと帰ってくるからね(^^)」
儀式が終わったようだ
最後に会話をしているようだ
そういえば、荷物が莫大にあるのだけれど……
あれを持って歩くのだろうか
「死んじゃダメだよ?」
「疫病には気を付けてね?」
「名前を忘れるんじゃないぞ?」
「人を殺めるのは最後の手段だからね?」
「平均体温36度5分をキープしてね?」
「ルードヴィヒ」
話が飛躍しすぎている
我々はどこへ行くつもりなんだ
そして
家族全員がツッコミをいれなかった
ルートヴィヒ
ルードヴィヒとは
ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン
言語哲学と分析哲学に影響を及ぼした人物
彼は言った
『語りえぬものには沈黙しなければいけない』
ようは
分からないものに口出しするなということ
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