番外編Ⅰ

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 私は騎士だ。私には夢がある。それは、この世界に住まう生物の頂点に君臨すると言っても過言ではない力を秘めた『ドラゴン』を従えた騎士となることだ。俗に言う『竜騎士』というやつだ。  しかし、私一人ではドラゴンを従えるなど不可能だ。逆に返り討ちされ、餌となるのがオチだ。だから、夢と言う名の妄想だったのだ。  そんな私に、転機が訪れた。それは、一人の召喚士との出会いからだ。彼女は、異世界の竜を召喚し、従えることが出来るという。それに、彼女にも夢があるそうだ。ドラゴンの背中に乗り、空を飛びたいという夢らしい。  私と彼女は意気投合した。ここに至る過程や職業は違うが夢の行き着く先は同じだったからだ。  彼女は言う。自分の召喚する竜は、異世界から召喚するので、この世界には長くは留めておけない、と。ならば、と私は彼女に言った。 「この世界に生きるドラゴンを捕まえに行こう!」  そして、私と彼女はドラゴンを求めて旅に出た。西に東に南へと旅をし、残るは北のみとなった。北にあった山脈で遂にドラゴンとご対面することが出来た。  大気を揺るがす咆哮。大地を掴む鋭い鉤爪。強靭な顎。その巨体を持ち上げる大きな翼。荒々しくも美しさを兼ね揃えた肢体。燃えるような体色。我々が求めていた要素を充分に満たす『レッドドラゴン』だった。私と彼女は、その姿に暫く見惚れていた。  耳を劈(ツン)ざく咆哮。彼女と私は、意識を戻した。今は見惚れている場合ではない。どうにかしてあのドラゴンを仲間にしないといけないのだ。  私と彼女は、ドラゴンの説得を試みた。私達は、腰に下げていた武器を地面に置き、手を上げて敵意がないと示すことから始めた。それを見て、ドラゴンは吼えるのを止めた。  出始めは良好だ。後は私と彼女の説得に懸かっている。夢と妄想を現実のものとするために、なんとしても仲間に率いれなくてはならない。
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