『召喚士』

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 来たれ。現れろ。  その想いを、自らの魔力で描き出した魔方陣を介し、異なる世界から力を呼び起こす。  魔方陣から顔を覗かせ、咆哮を轟かせる異なる世界の力の化身である『竜』は、敵軍の中心に向けてその口より火炎を吐き出す。その焔は、敵を骨も遺さず焼き払う灼熱の業火。故に、この力は使い方を誤ると、呼び出した我が身をも焼き尽くす諸刃の劔。  始まりはいつだっただろうか。私は、魔導士としては至って普通の魔力を持っていた。抜群に特化してる訳でもなく、かと言って全くないという訳でもないそんな位置だ。  軍に入ると決めた時、試験を受けた。魔力をこの身に秘めていたことにより魔導士という兵種を与えられ、念願の憧れだった将軍の軍に配属された。  自身の中で、憧れの将軍は魔導士としても最高の御方だった。その力の前には敵は蹂躙され、討ち滅ぼされる。その力は憧れや尊敬の念の先にあっても燦然と輝いていた。  その力を目の当たりにして私は憧れを抱くと共に疑問も抱いた。何故、あの御方には強力な魔力があるのに私には平凡な魔力しかないのか? 方や転生を繰り返している大陸最凶の魔女、方や生を受けて20年も満たない青二才だ。差が生まれるのも必然だろう。  故に私は力を求めた。魔導書を読み漁り、魔力を増幅させる訓練を欠かさず行い、研究と実験を重ねる日々を繰り返した。  訓練と研究を繰り返す内に、私は魔導研究所に配属された。研究を進めるには最高の場所だろう。  禁呪、人体改造、魔獣合成といった研究と実験をしている場所だ。私の研究も更なる進歩をみせるかもしれないと思った。  将軍に対する私の憧れを秘めた力。召喚魔法という技術は他の魔導士には無い力だ。ならばそれをものにすれば憧れだった力が手に入るのか。  私の求める力という目標は『召喚』という魔法に絞られた。
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