『召喚士』

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 私は研究を重ねた。今までの研究が塵に等しくなるまで積み重ねた。だが、あの力には遠く及ばない。何故だ。私の研究に何が足りないのか分からなかった。  研究所にある魔導書からヒントを探り、研究を重ねる。  月日が流れた。そうして、やっと私の研究に足りないものが理解出来た。  研究に使っていた次元結合方程式と空間固定理論が僅かに間違っていたのだ。間違いが分かればあとは問題ない。間違いを正し、異空間召喚計算式を完成させる。  完成させた計算式を基に、試験をした。結果はまずまず成功といったところだ。  ならば、あとは実戦で試すのみ。私は召喚魔法を携えて一つの戦場に向かった。  戦場で私は召喚魔法を使った。試験用でない実戦用の召喚魔法だ。  魔方陣から竜が顔を出し、万物を焼き払う炎を吹く。威力は絶大。敵軍は瞬く間に消し炭へと変えられた。あとに残るのは焼け焦げた大地と炎から逃れた敵の青ざめた表情。それらの結果を見た私は気分を良くした。  召喚魔法を携えて戦場を渡り歩く私を見て、人々は言った。奴は竜を喚ぶ『召喚士』だと。  私の記憶に残っている言葉がある。召喚魔法を使い、敵を消し炭にしたあとに言われたものだ。 「お前、召喚魔法を使うのか。お前には早すぎる力だ、馬鹿者。だが、まぁ良くやったな」  それを聞いた時、元々は羨望から産まれた事とはいえ、研究をやり遂げて良かったと思った。憧れだった将軍から直々の言葉だからだ。  今日も召喚魔法を片手に戦場を渡り歩く。竜を召喚し、敵を焼き払う。さて、次はどこへ赴こうか、と考えながら戦場を後にする。  あとに残るのは焦土のみ。
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