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闇。それは暗黒。
闇の力を糧に敵軍を切り裂き、戦場に一筋の屍の道を造り出す騎士。被害を免れた敵兵は青ざめた表情で、その戦友が居たであろう一筋の道を造り出した張本人を目で追う。
私は暗黒騎士と呼ばれる存在だ。私も最初から闇の力を持っていたのではない。私は剣士だった。騎士になることを夢見て、そして戦争の『狂』という負の力に染まった世界を変えたい一心で、聖女が指導者のアザルト連邦に兵士として志願した。
短い訓練期間を経て、私は仲の良くなった戦友と共に戦場に送り込まれた。始めは良かった。途中からだ。私が『力』を欲したのは。
双方の軍隊が怒濤の如く大地を駆け衝突し、交差する。迫りくる敵を私が持つこの剣で斬った。狂おうとする感情を必死に抑え、また斬った。私の隣にいた戦友の存在が、私に勇気を与えた。
しかし、それは起こった。
「しっかりしろ! おい!」
仲の良かった戦友が、敵の魔法によって倒された。私の隣で戦っていた彼が、だ。直ぐに駆けつけて声を掛けたが、反応は無かった。ここで、私が直ぐに行動を起こしていれば彼は助かったのかもしれない。
敵の魔法攻撃の第二波がきた。
味方が宙を舞う。私も煽りを受けて飛ばされた。爆風が無くなると、急いで辺りを見回したが戦友の姿は無かった。
大切な戦友を助けられなかった自分の不甲斐なさと無力に嘆き、力を欲した。何者にも敗けない強き力。大切なモノを守る力。守るため、障害を全て破壊する力。それを欲した時、私は力を得る権利を手に入れた。それは、世界を支配している『闇』という力。
私は『闇』を受け入れた。そして、剣士から騎士となりこの力で敵軍を切り裂き、戦場を駆け抜ける。
闇の力をその身に宿し、大切なモノをもう無くさない、無くしたくないという強い想いを胸に秘め、その者は戦場で剣を振るう。
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