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現在の刻は深夜二時。漆黒の夜空を背景に、少年は戦っていた。
粉塵の舞う最中、少年は敵の剣筋を見極め、それを自身の剣で受け流す。バランスを失った敵に、力の加減を知らない勢いが相手に向かっていき──とかではない。
少年の敵は見えないものであり、漠然としていて。
皆に問いたい。
自分自身との闘いとはなんなのだろうか。
それは受験であり、就職活動ありき、はたまた夫婦間に起きる綻びを繋ぎ止めようとするのも。
少年の敵はそれによく類似しているのかもしれない。
見えざる敵は十六年間生きて培った経験、又は常識。そういった類いである。
街灯がぽつぽつとあるだけの、特徴のない路地。
本来ならば、暗澹とした背景と静寂が支配している筈なのだが、何故か命にかかわるような戦場と化していた。
──なぜこんなことになったのだろうか……。
葛藤の最中、少年は見慣れない路地を疾走する。
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