『プロローグ』

2/4
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
 現在の刻は深夜二時。漆黒の夜空を背景に、少年は戦っていた。  粉塵の舞う最中、少年は敵の剣筋を見極め、それを自身の剣で受け流す。バランスを失った敵に、力の加減を知らない勢いが相手に向かっていき──とかではない。  少年の敵は見えないものであり、漠然としていて。  皆に問いたい。  自分自身との闘いとはなんなのだろうか。  それは受験であり、就職活動ありき、はたまた夫婦間に起きる綻びを繋ぎ止めようとするのも。  少年の敵はそれによく類似しているのかもしれない。  見えざる敵は十六年間生きて培った経験、又は常識。そういった類いである。  街灯がぽつぽつとあるだけの、特徴のない路地。  本来ならば、暗澹とした背景と静寂が支配している筈なのだが、何故か命にかかわるような戦場と化していた。  ──なぜこんなことになったのだろうか……。  葛藤の最中、少年は見慣れない路地を疾走する。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!